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2022年6月コラム

小財政学

菅原 敏夫

 6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ〜課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現〜」が閣議決定された。いわゆる「骨太の方針」である。自らを「骨太」と表現するなど、慎みもない、なにより内容にさまざまな問題のある方針だが、自治体の「予算編成方針」に比べて、時期が早く、自治体が長の予算編成権に寄りかかった(依命通達)方針通知であるよりも、議論が開かれており(経済財政諮問会議答申を経て、自民党内の異論も踏まえて)、予算編成の改革、編成過程の公表に関しては、自治体予算編成よりも前進している。
 もちろん問題は方針の内容だ。しかしここでは、内容に触れず、どのようなメッセージを受け取ったかということだけに絞って論議を始めたい。大新聞はおしなべて骨太の方針に不満だ。当然新聞がいきなり褒めるということはありえないが、不満の方向は一致している。(朝日)「歳出抑制を形骸化」、(毎日)「(財政)健全化を訴えていたが……積極派の主張を大幅に受け入れた」、(読売)「安倍元首相側の意向が反映」「積極的な財政出動」、(日経)「財源の確保や抜本的な制度改革も不透明」とプライマリーバランス黒字化等の目標後退を難じている。
 国の財政の現状はどうなのだろうか。7月になれば、財務省が21年度決算見込みを公表するので、そのときに確認すればよいが、3月末時点でも国税は過去最高値、2年連続で過去最高を更新する勢いだ。消費税だけでなく、法人税のペースが早い、所得税も負けてはいない。地方税も同様の傾向だ。新聞が「歳出も膨張」「精査重要」とたしなめなければならないほど数字はいい。確かに、数次に渡る補正予算で、予算規模は膨らんだ。しかし、それこそ精査が十分でなく、執行できない予算額も膨大で、ばらまきを戒めるより、ばらまかなかったことを反省する必要があるくらいだ。財政法第6条は、決算剰余金の二分の一を下らない金額は公債又は借入金の償還財源に充てなければならないと規定している(地方財政法も第7条で同様の規定をおいている)。精査の不十分な予算は結果として財政の健全化に資する。
 税収状況を見る限り、(こうした表現はいかなる状況でも慎まなければならないと肝に銘じつつ)疫病と戦争は資本主義(新しい資本主義も含め)の施肥である。この資本主義を修正する道はただ一つ、分配過程への政府・公共の直接介入である。資本主義の摂理は格差を自動的に拡大することがわかった。それも「持たざるもの」から「持てるもの」への所得の移転によって生じている。倫理的にも許されない。
 映画を一つ思い出した。「アビエイター」。マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演、大富豪ハワード・ヒューズの伝記である。印象的な言葉quarantineが出てくる。検疫という意味もあるが、疫病対策としての隔離というほどの意味だろう。部屋から出られない、衣服さえも受け付けない。富豪の奇行と言われてきたが、今となっては、ロックダウンの隠喩のようにも思える。富豪であれば疫病にも負けないのだ。
 分配過程の分析と実行のためには、財政学が要る。私が学生時代に習った財政学での政府収入はもっぱら租税だったが、気がついてみれば、収入のかなりの部分は公債になっている。それを「財政健全化」を目標にして、見ないことにするのではなく、そうやって貨幣をかき集めるやり方をなんとか理論化できないものだろうか。是非ではなく、政府が、もちろん地方自治体も、信用創造をし、政府貨幣を作り出し、需要を生み出し、何よりも「持たざるもの」への所得を作り出して分配するという、資本主義の修正を理論化できないものだろうか。
 表題の財政学には「小」を付けた。私の希望なんて、不勉強で控えめ、謙遜(自己卑下)でもあるのだが、財政学の中に、小さくとも硬い理論の核が必要なのではないか。とりあえず二つ、政府が貨幣を作り出してしまう(和同開珎効果)、返さなくともよい負債(つまり拠出資本形成・維持効果)カテゴリーの創出、なのだが。

 

(すがわら としお 元公益財団法人地方自治総合研究所研究員)

 

 

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