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2010年11月コラム

 

事業仕分けと政策評価

武藤 博己

 

 

  政策評価に関する自治体の委員会にかかわっていると、事業仕分けをやりたいという要望が聞かれることがある。国やいくつかの自治体では事業仕分けが大いにもてはやされており、歳出抑制の有効な手立てとして活用されているといえる。しかしながら、これまでの国や自治体の事業仕分けを見聞きしていると、これでよいのだろうかという疑問におそわれる。たとえば、事業仕分けは事業評価の一手法であるが、評価の手法として重要な視点を見落としているのではないか、という疑問である。

 事業仕分けとは、構想日本が2002年から行っている行政の「事業仕分け」といわれ、自治体での事業仕分けが先行した。その方法は、@予算項目ごとに、A「そもそも」必要かどうか、必要ならばどこがやるか(官か民か、国か地方か)について、B外部の視点で、C公開の場において、D担当職員と議論して最終的に「不要」「民間」「国」「都道府県」「市町村」などに仕分けていく作業、と説明されている(構想日本のホームページ http://www.kosonippon.org/shiwake/ 参照)。仕分け結果からみると、それほどうまく仕分けられているようには思われない。

 国では、周知の通り、第3弾の仕分けが行われたばかりである。第1弾は、昨年の11月に9日間にわたって、449事業を対象として事業仕分けが実施された。「仕分け劇場」と評されたように、多くの傍聴者を集めた。そこでの効果として、ある集計によれば、必要性が乏しい事業などの「廃止」や「予算削減」により概算要求から約7,400億円が削減可能とされ、公益法人や独立行政法人の基金のうち約8,400億円を国庫へ返納し、「仕分け効果」は総額で約1.6兆円になったという(朝日新聞2009/11/28)。

 第2弾は、今年4月から5月にかけての8日間にわたって実施され、前半は47独立行政法人の151事業が対象とされ、42事業が事業の一部を含め「廃止」という結論となり、15事業は不要資産の国庫返納が求められた(朝日新聞2010/04/29)。後半は67公益法人と3特別民間法人の82事業が対象とされ、31法人の38事業に「廃止」の結論が下された(朝日新聞2010/05/26)。ただし、公益法人は民間法人であるため、これらの結論には強制力がなく、対応は所管官庁や法人に委ねられ、また期待された削減効果も徐々に低下した。

 第3弾は、10月27日から4日間にわたって実施され、後半は11月15日から4日間の日程で行われる。前半では、18特別会計・48事業が対象とされ、そのうち4特会・8事業が「廃止」と判定された。これによる削減額は約250億円だという(朝日新聞2010/10/31)。今回もマスコミの注目を集め、公開による透明性は高まったが、歳出抑制効果はますます低下した。そのため仕分け側の政治家たちも、削減よりも改革を強調しはじめた。

 政策評価にかかわってきて、もっとも重要な評価の役割は政策の見直し・改革であると考えてきたし、また評価は事業単位ではなく、「一定の社会的効果を有する事業のまとまり」である施策単位で実施すべきだと主張してきた(コラム「政策評価における『施策』の意味」、『自治総研』2001年5月号)。

 事業という単位で仕分けが行われた第1弾は、削減効果が当初のもくろみである3兆円には届かなかったものの、それなりの削減効果はあった。しかしながら、類似の事業が山ほどある中で、なぜその事業が仕分け対象とされたのか、施策の中でどのような意味を持つのか、類似事業との比較考量が不十分ではないか等、疑問・批判がつきまとう。

 第2弾・第3弾は、事業という単位ではなく、法人とか特会という単位で行われた。どちらも長い時間をかけてつくられてきた制度であり、短時間に改善の手法を示すのは難しい。そうした中でも廃止や見直しを求める結論が出せたことは、評価できる。とはいえ、「見直しを行う」とか、「予算要求を10〜20%程度圧縮」という相手側に依存した結論はなにか物足りない。

  ではどうすべきであろうか。もっと時間をかけて継続的に見直すことが必要であろう。ただし、行政側に下駄を預けず、政治主導と第三者性を貫徹する組織による見直しが不可欠である。そして施策の中から事業を選択して判断するのではなく、施策内のすべての事業を俎上に載せて、施策としての総合的な判断に基づいて、事業ごとの効果を比較考量しながら、事業を評価すべきである。

(むとう ひろみ 法政大学大学院政策創造研究科教授)

 

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