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2003年10月のコラム

“地方公務員制度改革”を思う
田中 義孝
 2001年12月25日に閣議決定された「公務員制度改革大綱」に基づく法制化作業は、さきの通常国会への法案提出をめざして進められてきたが、ここにきて一頓挫し、新たな事務局体制の下で、来たる通常国会に向けた作業が行われることとなった。その成否のほどは推測のかぎりではない。
 ところで、地方公務員制度の改革についても、国家公務員制度の改革に準じて所要の改革を行うべきことが、「公務員制度改革大綱」により明示されており、それは国家公務員法改正と同時期に地方公務員法改正もなされることと期待されている。その作業は総務省自治行政局公務員部が中心となって行われており、具体の作業が進んでいると思われるが、「地方公共団体をはじめ関係者の意見等も伺いながら、適切に対処」するという言明(荒木慶司公務員部長・『地方公務員月報』平成15年1月号)にもかかわらず、さっぱり見えてこない。しかし、国と同様に、「地方公務員制度においても、職員の能力・業績に応じた任用、給与等の制度や新たな評価制度の枠組みを整備することが必要」(同前)というのであるから、ことは「人事制度」の確立が主眼であって、本来めざされるべき地方公務員制度の改革が指向されているとは思われない。
 国であれ自治体であれ、公務員制度は、国民または住民にたいして説明責任を果たしつつ行政を担う公務員の仕事のあり方と、公務員労働者の権利・義務を明定するものでなければならず、そこでは、行政の民主制・公正性・透明性が担保されなければならない。
 そのためには、公務員1人ひとりの主体性と仕事をするにあたって対国民・住民への説明責任を果たすことが出来る自由と責任が、制度として確立される必要がある。たとえば、アメリカにおけるホイッスル・ブロアー法やドイツの官吏法における異議申立ての義務=権利Remonstrationの制度化である。前者は、公益の重大な侵害(たとえば公金の大量浪費)があると認められる場合にそれを知りえた公務担当者は内部告発をすることが認められ、当該者は保護されるというものであり、後者は、法令違反の上司の命令にたいして、受命者は異議申立てをする義務=権利があるというものである。下命者がその異議にもかかわらず、命令を維持するときは、その下命者の直近上司になお異議を申立てることができ、この上司が下命者の命令を維持するときにはじめて、受命者はその受けた命令にかかる業務を遂行しなければならないが、この場合には、当該法令違反につき免責されるとされているのである(逆に、この異議申立ての手続を踏まずに法令違反の業務をした受命者はその行為につき処罰を免れない)。
 一考に値すると思われるが、現在進行中の公務員制度改革には、こういったことは埒外に置かれており、遺憾に思う。
(たなか よしたか・地方自治総合研究所非常勤研究員)

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